Archive for the ‘登記手続’ Category

抵当権追加設定登記ついて

2021-08-14

皆様、こんにちは。

司法書士の北村でございます。

本日は、抵当権追加設定登記について記載したいと思います。

 

抵当権追加設定登記とは

抵当権追加設定登記とは、文字通り同一の債権を担保するために既存の抵当権に新たに担保物件を追加する登記をいいます。

例えば、以下の事例を想定していただければイメージが湧くと思います。

・土地を先行取得して、その後建物を新築

・土地の取得の際、その購入資金を得るため融資を受ける。

・融資を受けた返済を担保するため、土地に抵当権を設定

・建物を新築後、建物にも抵当権の効力を及びよう、抵当権を建物に追加設定

 

抵当権追加設定登記の方法

抵当権の追加登記には登記上、細かい決まりがあります。

 

原則として被担保債権の表記(発生原因、債権契約日、抵当権者等)については同じであることが必要となります。

但し、以下の項目については同じでなくてもよいとされております。

・債権額(こちらは、追加設定まで返済等により設定額が減少している場合も想定しております。)

・利率(こちらも債権額と同様、追加設定時に変動金利等で異なっている可能性も考慮しております。)

・債務者の住所

※根抵当権の場合は、債務者の住所変更をしないと登記が却下されますので、注意が必要です。

 

抵当権追加設定登記の登録免許税

抵当権の設定登記の登録免許税は原則、債権額の1000分の4です。(住宅の場合は、軽減措置を利用できる場合があります。)

追加設定登記の場合は、前登記証明書を添付することで追加不動産1個につき1500円となります。

追加設定登記の物件が同一管轄の場合は、前登記証明書の添付が省略できます。

 

追加設定登記ができる担保の客体

追加設定登記の担保の客体は、不動産だけでなくみなし不動産も追加設定登記の対象とすることができます。例えば、各取材団(工場財団、漁業財団、鉱業財団、観光施設財団等)、登記された立木も追加登記の対象とすることができます。

一方で、農業用動産、登記船舶、建設機械、鉄道財団は共同担保とすることができません。

なお、自動車は共同抵当を設定可能ですが、登記はできません。

債権譲渡登記の債権発生始期と終期について

2021-07-24

皆様、こんにちは。

司法書士の北村でございます。

 

本日は、債権譲渡登記の債権発生始期と終期について記載したいと思います。

 

債権発生始期と終期とは

債権譲渡登記では、譲渡債権を当事者(譲渡人、譲受人)、債権発生原因、債権発生始期と終期で特定いたします。

譲渡債権が複数の場合に、譲渡債権を特定するため、譲渡したい債権の期間を指定(始期と終期)することで、明確にいたします。

例えば、A社(譲渡人)の売掛金をB社に譲渡する場合を考えます。A社の7月分、8月分、9月分、10月分の売掛金を譲渡する場合は、債権の発生始期として7月1日、終期として10月31日を指定して、特定いたします。

 

債権の発生始期と終期の定め方

債権譲渡登記をする場合は、原則的に債権の発生始期と終期を定める必要がございます。

担保権者としては、弁済を受けられる程度は担保したいと思われるかと存じます。

そこで、おおよそ下記のように定めれば、ある程度は担保できるものと思われます。

 

債権の発生始期の定め方

例えば、譲渡人の売掛金を担保とする場合を考えます。債権の発生始期としては、第三債務者毎に債権の発生を全て調査して、第三債務者毎に定めることが一番間違いがございません。しかしながら、取引先が多い場合は、実務上、事務作業が多くなり、現実的ではございません。そこで、譲渡人の掛け取引のおおよそのサイクルを調べ、仮に3カ月が多いとすれば、登記原因日の6カ月程度を定めれば、回収漏れが少なくなると考えます。(3カ毎に売掛金の発生消滅が繰り返されますので、1サイクル前の期間程度を定めれば、ほとんどの売掛金が消滅しているため、回収漏れの可能性が少なくなると思われます。)どうしてもご心配な場合は、更に1年程度遡って設定することも考えられます。

なお、債務者不特定の場合は、将来債権しか登記できませんので、債権発生始期は、登記原因日が最短となります。(将来債権の場合は、登記原因日より債権発生始期が前の場合は、登記できません)

 

債権発生終期の定め方

債権の発生終期は、最終弁済期+αで定めればよいと考えます。本来であれば最終弁済期で十分でございますが、債務不履行が生じた場合は、困ることになりますので、αの部分を信用度等を考慮して、定めればよいかと存じます。なお、1年又は半年程度としている場合が多いです。

 

回収漏れを防止する趣旨で、債権発生終期をなるべく長期にわたって登記したいとのご要望はあるかと存じます。しかしながら、「期間の長さ等の契約内容が譲渡人の営業活動等に対して社会通念に照らし相当とされる範囲を著しく逸脱する制限を加え、又は他の債権者に不当な不利益を与えるものであると見られるなどの特段の事情の認められる場合には、右契約は公序良俗に反するなどとして、その効力の全部又は一部が否定されること」がございますので、ある程度合理的な期間とする必要がございます。

なお、将来債権として、診療報酬債権を8年3か月分譲渡することを認めた判例がございますが、これは譲渡人等の収益力等によって変わってきますので、一概にはいえないと思います。

債権、動産譲渡登記の存続期間

2021-07-10

皆様、こんにちは。

司法書士の北村でございます。

 

本日は、債権、動産譲渡登記の存続期間について記載したいと思います。

 

債権、動産譲渡登記の存続期間

債権譲渡登記、動産譲渡登記は不動産登記と違って、存続期間が設けられております。不動産登記は、当事者が抹消登記等を申請しない限り、登記は永続的に登記されたままです。債権譲渡登記、動産譲渡登記には、登記の存続期間が設けられております。登記の存続期間が満了すると、法務局が職権で登記が抹消されることになります。登記が強制的に抹消されるので、存続期間経過後は、登記による第三者効力要件が消えることになります。

 

動産譲渡登記の存続期間と存続期間を超える登記を設定する方法

動産譲渡登記の存続期間は、特別な事由がない限り、登記申請日から10年です。

 

特別な事由とは、登記を10年以上、存続させなければならない事由をいいます。例えば、動産譲渡担保の被担保債権である金銭消費貸借の最終弁済日が10年を超える場合です。この場合は、最終弁済期日まで登記の存続期間を延ばすことができます。

この場合は通常の添付書類に加えて以下の書類が必要です。

・最終の弁済期日を証する書類(金銭消費貸借契約書等)

・動産譲渡担保契約書(上記金銭消費貸借契約書の担保であること並びに登記事項がわかるもの)

 

契約書は原本を添付して申請することもできますが、債権、動産譲渡登記は原本還付ができません。そこで、契約書の写しに当事者が原本証明を施すことで申請可能となります。

 

債権譲渡登記の存続期間

債権譲渡登記の存続期間は以下のとおりです。

全ての債権が債務者特定の場合:登記申請日から50年

1個でも債務者不特定の債権がある場合:登記申請日から10年

なお、上記期間以内であれば、債権発生終期より前の日を存続期間とすることができますが、債権発生終期が到来する前に登記が抹消されますので、注意が必要です。

 

また、債権も動産と同様に特別な事由があれば、登記の存続期間を延ばすことができます。

方法は動産と同じです。

 

まとめ

債権、動産譲渡登記では登記の存続期間が定められております。動産では登記申請日から10年、債権譲渡登記では、全ての債権が債務者特定の場合は登記申請日から50年、1個でも債務者不特定の債権がある場合は登記申請日から10年となっております。存続期間が満了すると登記が強制的に抹消され、第三者対抗要件も消滅いたしますので注意を要します。

診療報酬債権への担保設定

2021-03-20

皆様、こんにちは。

司法書士の北村でございます。

 

本日は、診療報酬債権への担保設定について記載したいと思います。

 

診療報酬債権とは

一般の方が病院等で診療を受けると窓口では3割の費用を支払います。病院等の医療機関は残りの7割の診療費を国民健康保険連合会等から支払いを受けることになります。医療機関は被保険者が窓口で支払った額以外の診療費を翌月10日までに国民健康保険団体連合会や社会保険診療報酬支払基金にレセプトを示して請求することになります。請求を受けた国民健康保険団体連合会等は2~3カ月程度後に医療機関に対して支払いを行います。医療機関に融資する金融機関等にとってみれば、2~3カ月後に国民健康保険団体連合会等の信用度が極めて高い機関から確実に支払いをうけられることになるので担保物から確実に回収できるため、大変好まれて利用されております。

 

診療報酬債権の担保設定

診療報酬債権は債権なので、抵当権等を設定することができません。債権担保として設定が許されているものとして質権と譲渡担保が挙げられます。実務上は譲渡担保が利用されることが多いです。質権でも譲渡担保でも実効について便宜が図られております。質権の場合は第三債務者から被担保債権の額に応じた部分に限り、執行手続きによらず直接取り立てることができます。債権譲渡担保は明文上の規定はありませんが判例等で第三債務者から直接取り立てることが認められております。債権質と違って担保物から全額を取り立てることができ、被担保債権を上回った分はその分を清算金として債務者に支払えばよいということになっております。

債権質、譲渡担保共に個別の債権のほか集合債権も担保に取ることが認められております。集合債権譲渡担保の場合、明確性の観点から判例では発生原因だけでなく始期と終期を明確にするなどして譲渡の目的とされる債権が特定されるべきであるとされております。

 

第三者対抗要件について

債権質も債権譲渡担保の第三者対抗要件は原則として、債務者から第三債務者に対して確定日付がある通知を送ってもらうか確定日付がある第三債務者からの承諾が必要となります。しかし、診療報酬債権の場合の第三債務者は国民健康保険団体連合会等の機関となります。国民健康保険団体連合会は都道府県に1団体、計47団体設立されておりますため、大変数が多く手間がかかります。また、債務者から送付してもらう必要があり、債権者からすると不安になると思います。

そこで、よく利用されているのが債権譲渡登記です。債権質も債権譲渡も債務者が法人であれば利用できます。なお、債務者が個人事業主の場合は登記は利用でません。

債権譲渡登記は登記所に保管されている債権譲渡登記ファイルに登記すれば、第三者に対して対抗力を付与するものです。第三債務者へは債権者から登記事項証明書を送付すればよいとされておりますので、現実に担保を実行する段階で債権者から送付すればよいので大変簡便に対抗要件を備えることができます。

なお、債権譲渡登記は第三債務者が不特定の将来債権についても債権の発生原因を具体的に記載すること、始期、終期を記載することで登記することができます。

 

診療報酬債権の担保設定をお考えでございましたら、神戸市中央区で開業しております北村司法書士事務所へ何なりとお問い合わせいただければと存じます。

 

銀行が合併した場合の抵当権抹消

2020-12-23

皆様、こんにちは。

司法書士の北村でございます。

 

本日は、銀行が合併した場合の抵当権抹消手続きについて記載したいと思います。

抵当権抹消登記を申請する際、抵当権権者である銀行等が合併した場合は、注意が必要となります。

 

銀行が合併した場合の抵当権抹消登記申請の原則

登記申請は、登記名義人が登記簿記載の記載事項と異なる場合は原則として現在の状態まで変更することが必要となります。例えば、登記簿記載の住所がA市であるが、その後住所変更でB市となった場合は、原則としてB市に住所変更登記をしなければ、登記申請を受け付けてもらえません。

抵当権抹消登記もこの原則に照らせば、抵当権者である銀行等が合併していた場合は、合併登記を経なければ抵当権抹消登記を受け付けてもらえません。しかしながら、銀行等が当事者となっているからなのか不明ですが、法務局は通常の場合より便宜を図っており、簡便に手続きをできるように図っております。以下、場合分けをして具体的な手続きについて記載したいと思います。

 

1.ローン完済前に銀行に銀行が合併していた場合

この場合は、登記簿記載の銀行が合併存続会社となっているか、消滅会社となっているかで対応が異なります。

①登記簿記載の銀行が合併存続会社となっている場合

この場合は、登記簿記載の商号や本店所在地が現在の商号、本店所在地と一致していれば、前提登記は不要で、直接、抵当権抹消登記を申請できます。

現在の商号、本店所在地と異なっていた場合は、原則、商号・本店変更登記が必要ですが、銀行が当事者となることが多いためかどうかわかりませんが、登記簿記載の商号・本店から現在の商号・本店までの変更来歴がわかる登記事項証明書を添付すれば、前提登記なしで直接、抵当権抹消登記を申請できます。

 

②登記簿記載の銀行が消滅会社となっている場合

この場合は、原則どおり抵当権者の合併登記を申請する必要があります。

この合併登記に際していくつか注意点がありますので、下記をご参考としていただければと思います。

(1)合併登記では合併の来歴が記載されてある登記事項証明書を添付することが必要となります。一部の銀行では登記事項証明書ではなく会社法人等番号のみ知らせてくる銀行があります。会社法人等番号を提供すれば登記事項証明書の添付不要との特例があり、この制度を使って申請してくれとのことなのですが、これは現在の登記簿で確認できることが前提となっております。合併登記の記載は、3年が経過すると閉鎖事項に追いやられます。(法務省には改善を要求したいです。)よって、銀行等からは閉鎖事項証明書をもらっておいたほうが無難です。

 

(2)三井住友銀行、みずほ銀行には注意

三井住友銀行は、実は2003年にわかしお銀行に合併され消滅しております。現在の三井住友銀行はわかしお銀行が商号、本店変更登記した形となっております。そのため、2003年以前に三井住友銀行から融資を受けた場合は、一度わかしお銀行に抵当権移転登記をした後でないと抹消できませんので、注意が必要です。

 

同様にみずほ銀行はみずほコーポレート銀行に2013年吸収合併され、消滅しております。三井住友銀行と同様に2013年以前に融資を受けた場合は抵当権移転登記をした後でないと抹消できませんので、注意が必要です。

 

2.ローン完済後に銀行に銀行が合併していた場合

この場合は、大幅に便宜を図って直接抵当権抹消登記を申請できます。通常の添付書面と異なる点として、現在の権利承継者までの来歴が記載された登記事項証明書を添付することが必要となります。(日本政策金融公庫や日本政策投資銀行のように法律で承継された銀行は添付不要です。)

 

まとめ

銀行の合併に伴う抵当権抹消登記は、ローン完済時期によって登記申請の方法が異なってきます。ご不明な点がございましたら何なりとお問合せいただければと存じます。

自動車を動産譲渡登記できるか?

2020-12-19

皆様、こんにちは。

司法書士の北村でございます。

 

本日は、自動車を動産譲渡登記できるかについて記載したいと思います。

 

自動車を動産譲渡登記できるか?

自動車を動産譲渡登記をして、借入を行いたいとの要望が多いです。

自動車については、原則として動産譲渡ができません。その理由としては、自動車には対抗要件に関する特別法が存在するからです。(道路運送車両法第5条1項)動産譲渡登記は民法178条の対抗要件を代替するものです。自動車登録がされた自動車は特別法である道路運送車両法が一般法である民法に優先されるため、民法所定の対抗要件を具備しても効力が認められない扱いとなっております。

 

道路運送車両法第5条1項

第五条 登録を受けた自動車の所有権の得喪は、登録を受けなければ、第三者に対抗することができない。

 前項の規定は、自動車抵当法(昭和二十六年法律第百八十七号)第二条但書に規定する大型特殊自動車については、適用しない。

 

未登録自動車は動産譲渡登記できるか?

登録された自動車は動産譲渡登記ができないことを述べました。一方で未登録自動車は動産譲渡登記できるかとの疑問がでてくるかと思います。結論から言えば、未登録自動車は動産譲渡登記できます。未登録とは一度も登録されていない自動車はもちろん登録が抹消された自動車も含みます。この場合登記は、動産の種類を「未登録自動車」として行うことが一般的です。その理由として単に「自動車」とすると登録している自動車と区別ができず、第三者対抗要件を具備する動産譲渡登記では、第三者からみて登記の効力を有するかわかりにくいからです。また、法務局も単に「自動車」とすると第三者からみてわかりにくいとの理由を挙げ、修正を求めてきます。動産譲渡登記は補正を認めておりませんので、トラブルを避けるためにも「未登録自動車」等としてわかるような記載で登記することをお勧めいたします。

 

軽自動車を動産譲渡登記できるか?

道路運送車両法第4条の登録は、軽自動車、小型特殊自動車及び二輪の小型自動車は除かれております。そこで、軽自動車等は動産譲渡登記ができるか疑問がわいてくるかと思います。軽自動車等は登録が対抗要件となっておりませんので、一般の動産と同様民法178条で定められる引き渡しが対抗要件となっております。よって、軽自動車も未登録自動車と同様に動産譲渡登記の対象となります。

 

まとめ

自動車は原則として動産譲渡登記の対象となりません。

但し、特別法による規定がない下記の自動車は動産譲渡登記の対象となります。

・未登録自動車

・軽自動車等

 

自動車に限らず、動産譲渡登記の対象となるかどうかはある程度経験が必要となります。思わぬところで登記ができないということもありますので、判断に迷われましたら、お気軽にお問い合わせいただければと存じます。

同一人間の順位変更登記

2020-11-18

皆様、こんにちは。

司法書士の北村でございます。

 

本日は同一人間の順位変更について記載いたします。

 

同一当事者の場合の順位変更登記の記載例

まず、同一当事者間の順位変更登記ができるかとの問題がございます。

結論からいいますと可能です。

他社間の順位変更登記と同一当事者の順位変更登記では、申請書の一部の記載が異なります。具体的には下記のとおりです。

 

他社間の順位変更登記の記載例

 

登記の目的 〇番△番順位変更

登記の原因 令和〇年〇月〇日 合意

・・・・

 

同一当事者間の順位変更登記の記載例

 

登記の目的 〇番△番順位変更

登記の原因 令和〇年〇月〇日 変更

 

登記の原因欄が他社間ですと「合意」、同一当事者の場合は「変更」と記載いたします。同一当事者の場合は、1人で「合意」することはないので実体に合わせて「変更」とすることにしています。うっかり間違いやすい項目なので注意が必要です。

 

同一当事者で順位変更することのメリット

同一当事者の場合、順位変更しようがしまいが、不動産競売によって受けられる配当に差はないため、同一当事者の場合、順位変更登記するメリットがあるのかと疑問を持たれる方も多いのではないでしょうか。

 

LBOファイナンスやプロジェクトファイナンスでは大規模な融資となることも多く、目的にあわせて融資も区別しております。それにあわせて複数の担保権を設定することも多いです。

 

また、融資額も多く、1つの銀行の融資枠を超えることも多く、協調融資(シンジケートローン)で行うことも多いです。シンジケートローンでは、当初、エージェント行のみで融資を実行し、その後、他行へ割当額に応じた債権譲渡することが実務上、多く行われております。他行へ債権を売るさい、各担保の順位が異なっていた場合は、後順位の担保権は売ることが難しくなります。そこで、順位変更登記を実施し、同順位の担保権とする必要性がでてまいります。

 

まとめ

順位変更登記はいろいろと気を付ける点が多いです。同一当事者で順位変更を行う場合と他社間で順位変更登記を行う場合では登記の記載文言が異なります。登記は記載文言が異なると取り下げざるを得ない状況となり、担保登記としては失敗となります。(融資に関する登記の場合は、やり直しを認めてくれることは稀で、場合によっては損害賠償の対象となります。)

順位変更登記を行う際は、司法書士として最大限の注意をもって行う必要があります。

順位変更登記について

2020-11-14

皆様、こんにちは。

司法書士の北村でございます。

 

本日はシンジケートローン(不動産登記)で司法書士が最も神経を使う順位変更登記についいて記載したいと思います。

前回、個別同順位で担保権を設定できない例として抵当権仮登記と根抵当権仮登記を同時に設定する場合を挙げました。このような登記はシンジケートローンではよくあります。

この場合は、否応でも順位変更登記が必要になります。司法書士にとって、最も、神経を使うことになります。まず順位変更登記について記載したいと思います。

 

順位変更登記とは?

順位変更登記とは、登記されている担保権(仮登記を含む抵当権、根抵当権、質権等)の順位を当事者の合意で変更する登記をいいます。

例えば、下記の例でみます

 

1番 抵当権仮登記 抵当権者 A銀行

2番 根抵当権仮登記 抵当権者 B銀行

 

この場合は、A銀行とB銀行が同順位で合意した場合、A銀行、B銀行共に順位1番の担保権とすることができます。

申請書には以下のとおり記載いたします。

 

「1番 抵当権仮登記 2番根抵当権仮登記 順位変更」と登記の目的を記載し、「変更後の順位 第1 抵当権仮登記 2番根抵当権仮登記」と記載いたします。

この申請書の記載方法が司法書士にとってもっとも緊張を要する原因(銀行からも記載方法についてよく質問を受けます。)となっております。

この「1番」、「2番」は実質順位ではなく登記簿に記載された順位を記載いたします。

例えば 

1番 地上権設定 地上権者 C

2番 抵当権仮登記 抵当権者 A銀行

3番 根抵当権仮登記 抵当権者 B銀行

 

の場合は、「2番 抵当権仮登記 3番根抵当権仮登記 順位変更」等と記載いたします。

 

順位変更登記の注意点

1.順位番号の指定

順位変更登記で司法書士が最も緊張する要因の最大の理由は順位の記載方法にあります。

登記簿に記載された順番を記載するだけではないかと思われますが、以下の理由から順位番号の特定が大変厄介なものとなっております。

 

①共有名義となっている不動産の場合

例えばマンションの共用部分となっている不動産では複数の人が所有権を共有しております。この場合、全く別の人が関係ないところで登記を入れれば申請書等に記載する順位が変わり順位変更登記を入れれば、登記が困難になります。

 

たったこれだけの理由で登記が困難な理由としては、順位変更登記に必要な登記原因証明情報の押印は大抵の場合は銀行となるところにあります。銀行の場合は、捨て印をくれないこともあり、順位を入れた場合は当日の申請が困難になり、登記ができないこともあり得ます。(銀行には順位番号空欄で案内することにしておりますが、シンジケートローンでは対象が多く、当日登記簿を事前閲覧してから入れたのでは、肝心の登記申請に間に合わない可能性があります。また、当日記載しても、申請までどうしてもタイムラグがあるため、その間にまったく関係ない登記が入れられる可能性も否定できません。かつて勤めていた事務所でそのようなことがあったと聞いたことがあるため、かなり緊張を強いられることになります。)

なお、銀行関係の場合は、仮に上記のようなことがあったとしても取り下げて後日、出しなおすことは認められないことが多く(対抗要件の取得日が遅れるため)、場合によっては損害賠償(シンジケートローンでは融資が数100億円レベルであり、損害保険では賄えないため、人生が終わります。)を求められる可能性があるため、大変緊張いたします。

 

②登記簿記載の知識が必要

順位変更登記は既登記済みの登記ではなく、新規に設定することが多いです。そのため、登記簿に記載される順位を正確に予測する必要があります。

例えば地上権に対する担保権だった場合は、主登記ではなく付記登記で登記されます。抹消は主登記で入り、移転登記は原則として付記登記ではいります。

このように登記簿記載の知識が必要であるため、登記番号を正確に予測し、登記申請の順番等を正しく組み立てる必要があります。

 

2.原因日付について

順位変更登記で司法書士が最も緊張する2番目の理由原因日付にあります。他の登記と違って合意日ではなく原則的に登記申請日となります。順位変更は既存の登記を変更することを建前としている以上、登記されていない担保権の変更について合意できないとの理屈をとっております。よって新規に担保権を設定すると同時に順位変更する場合は、登記申請日を合意日に記載する必要があります。

うっかり他の登記と同じ日付とする誤りを犯しやすいので、注意が必要です。

 

まとめ

順位変更登記は誤りやすいポイントがたくさんあります。

当事務所ではたくさんの事例を扱っており、融資による担保登記について様々な経験とノウハウがございます。複雑な担保登記で迅速に登記を行いたいとお考えの場合は、一度ご相談いただければ幸いです。

シンジケートローン(不動産登記)で担保権を個別同順で登記する方法

2020-11-11

皆様、こんにちは。

司法書士の北村でございます。

 

本日はシンジケートローン(不動産登記)で抵当権の担保権を個別同順位で登記する方法について記載いたします。

 

個別同順位登記の必要性

シンジケートローンでは、複数の銀行や保険会社等が複数の担保権を設定することが一般的です。担保登記の主な目的は、第三者対抗要件を備えることにあります。担保権の場合は、特別に順位という概念があり、例えば、A銀行、B銀行がそれぞれ1000万円、500万円融資し、順位1番でA銀行、2番でB銀行が抵当権を設定したといたします。

 

乙区(抜粋)

1番 抵当権設定 令和〇年〇月〇日受付第○○号 

         抵当権者 A銀行 債権額 1000万円

2番 抵当権設定 令和〇年〇月〇日受付第△△号 

         抵当権者 B銀行 債権額 500万円

 

上記場合に、債務者が1円も返済せずに返済を滞らせた場合、抵当権者は抵当権の対象とした不動産を競売にかけて、売却代金から他の債権者に優先して、配当を受けることができます。

仮に不動産の売却額が1200万円の場合、1番抵当権者であるA銀行は売却代金から1000万円の弁済を受けられるのに対してB銀行は200万円しか優先弁済が受けられません。残りの残債の300万円は他の債権者と同様に債務者の別の資産から平等配当となり、債権全額の弁済を得られない可能性があります。

このような不都合を回避するため、シンジケートローンではA銀行、B銀行共に同順位として1番抵当を設定することが一般的です。なお、同順位設定した場合、上記例ですと

A銀行の優先弁済が受けられる額は 1200万×1000万/1500万=800万円

A銀行の優先弁済が受けられる額は 1200万×500万/1500万=400万円 となります。

 

個別同順位登記の方法

不動産登記では、上記実務上の要請に応えるため、設定時にいきなり同順で設定する方法を用意しております。条件としては、設定する不動産が共通である必要があります。共通でない場合は後述いたします。

 

その方法としては、上記例の場合は申請書に「同順位 1/2」「同順位 2/2」と記載するだけです。

こうするだけで同順位設定してもらえます。

記載例(抜粋)としては、以下の通りとなります。

 

1番(あ) 抵当権設定 令和〇年〇月〇日受付第○○号(あ) 

         抵当権者 A銀行 債権額 1000万円

1番(い) 抵当権設定 令和〇年〇月〇日受付第○○号(い)

         抵当権者 B銀行 債権額 500万円

 

見分け方としては、受付番号が同じということです。受付番号の後に(あ)(い)という振り合いで登記されます。

 

不動産登記法

(受付)

第十九条 登記官は、前条の規定により申請情報が登記所に提供されたときは、法務省令で定めるところにより、当該申請情報に係る登記の申請の受付をしなければならない。

2 同一の不動産に関し二以上の申請がされた場合において、その前後が明らかでないときは、これらの申請は、同時にされたものとみなす。

3 登記官は、申請の受付をしたときは、当該申請に受付番号を付さなければならない。この場合において、同一の不動産に関し同時に二以上の申請がされたとき(前項の規定により同時にされたものとみなされるときを含む。)は、同一の受付番号を付するものとする。

 

担保対象不動産が異なる場合の同順位登記の方法

担保対象不動産が異なる場合は不動産登記法第19条によう、上記の簡便な方法がとれません。この場合は、一旦、別順位で登記し、登記後、事後的に順位変更登記を申請する必要があります。順位変更登記はシンジケートローンでは司法書が最も神経を使う登記で、非常に大変となります。

 

シンジケートローンにおける担保対象不動産が異なる場合の代表例

シンジケートローンにおいて、担保対象不動産が異なる例として最も多いケースとして根抵当権仮登記と抵当権設定仮登記がある場合です。(コミットメントラインやタームローンがある場合は、通常、このようなことになります。)

登記実務では、根抵当権と抵当権の仮登記はかなり異なった対応となっております。

抵当権仮登記の場合は、不動産が複数でも1の申請で全て申請できるのに対して根抵当権仮登記の場合は、1の申請で全ての申請ができません。このため、不動産が100筆あれば根抵当権仮登記は100件申請しなければなりません。

これは、抵当権の共同担保は契約によって効力が発生するのに対して、根抵当権の共同担保は登記が効力要件となっているためです。仮登記は、本登記して初めて登記の効力が認められるため、登記実務はこれに忠実に守るため、仮登記の場合は共同担保設定は認めておりません。これにより、不動産が複数あった場合は、不動産1筆毎に個別担保を設定登記するよう求めております。

上記理屈により、担保対象不動産が共通であったとしても抵当権仮登記と根抵当権仮登記があった場合は、設定時から個別同順位設定登記が認められないことになり、順位変更登記を行う必要性が出てまいります。

このことは、普段、シンジケートローンなどをたくさん行っている銀行担当者でもご存じの方が少なく、毎回、登記するに当たって説明を求められることが多いです。

 

まとめ

登記実務は理不尽なことも多く、個別案件によって異なる対応が求められることもしばしばあります。シンジケートローンに関しては、当事務所は数多くの経験を有しております。

ご不明な点がございましたら些細なことでも真摯に応えさせていただきますので何なりとお問い合わせいただければと存じます。

 

建物の登記要件

2020-10-31

皆様、こんにちは。

司法書士の北村でございます。

 

本日は建物の登記要件を記載したいと思います。

建物は全て登記できるわけではありません。不動産登記法上、建物と認められた建物のみ登記が認められることになります。

 

建物の登記要件

不動産登記可能な建物の要件は下記のとおりです。

①定着性

②外気分断性

③用途性

 

①定着性とは?

定着性とは建物が土地に固着していることが必要となります。これは単に土地に定着しているだけではなく、永続的に使用できるものとなっていなければなりません。例えば、組み立て式の物置等は永続的に使用できるものではありませんので、登記ができません。

定着性の要件を満たしているかどうかの一つの判断基準として、基礎等が施されているかどうかが目安となります。なお、仮設住宅や作業員の宿泊施設等は基礎が施されていますが、目的が達成すれば解体されますので、永続性の観点から登記できません。

 

②外気分断性とは?

外気分断性とは簡単に言えば壁で囲まれていることかつ屋根があることです。例えば解放されている牛舎等は壁で囲まれておりませんので、登記ができません。

 

③用途性とは?

用途性を簡単に説明するのは難しいですが、一言でいえば人が滞在できるかどうかが一つの判断基準となります。例えばガスタンクは、人が中に入ることを想定しておりませんので、建物登記ができないことになります。

 

 

以上、建物として登記できる要件を記載いたしました。上記はあくまで基準でありますので、上記要件に当てはまっても建物として登記できる場合があります。判断に迷われましたらお近くの土地家屋調査士にご相談いただければ思います。

 

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