Archive for the ‘コラム’ Category

個人再生における別除権の取り扱いについて

2021-06-12

皆様、こんにちは。

司法書士の北村でございます。

 

本日は、個人再生における別除権の取り扱いについて記載したいと思います。

 

別除権とは

別除権付再生債権とは簡単にいうと担保権がついている債権をいいます。具体的には民事再生法第53条に規定されており、①特別の先取特権②質権③抵当権④留置権⑤その他の担保(譲渡担保権、所有権留保等)が挙げられます。

 

(別除権)

第五十三条 再生手続開始の時において再生債務者の財産につき存する担保権(特別の先取特権、質権、抵当権又は商法若しくは会社法の規定による留置権をいう。第三項において同じ。)を有する者は、その目的である財産について、別除権を有する。

 別除権は、再生手続によらないで、行使することができる。

 担保権の目的である財産が再生債務者等による任意売却その他の事由により再生債務者財産に属しないこととなった場合において当該担保権がなお存続するときにおける当該担保権を有する者も、その目的である財産について別除権を有する。

 

別除権付再生債権の取り扱い

個人再生手続きにおいて別除権付債権は、担保権実行によって弁済を受けることができない額が確定しない限り弁済を受けることができません。個人再生手続きにおいては、担保権実行し不足額がく確定するまでには相当の時間がかかるため、担保不足見込額をもって再生手続き上の債権額として取り扱うことにしています。

また、別除権として認められるためには第三者対抗要件が必要となります。自動車ローンの場合ですと、ほぼ所有権留保していることが多いので、第三者対抗要件は車検証の名義がローン会社となっていることが必要です。

 

別除権付再生債権の弁済方法と注意点

別除権の行使には時間がかかります。担保不足見込額をもって再生計画が認可された場合の注意点を記載いたします。

別除権付再生債権については、再生計画において不足額が確定した場合における条項を定める必要があります。例えば不足額が確定した旨の通知を受けた日に既に弁済期が到来ししている分割金については当該通知を受けた日から2週間以内に支払う。といった条項が考えられます。上記例の条項で不足額が360万円、3年で弁済する計画で10回目の弁済後であった場合には、360万円÷36回×10=100万円を2週間以内に支払い、以後は10万円を毎月支払う必要があります。従って、不足額が確定するまでの間は弁済見込額を計画的に積み立てておく必要があります。

一般社団法人の基金について

2021-06-05

皆様、こんにちは。

司法書士の北村でございます。

 

本日は、一般社団法人の基金について記載したいと思います。

 

一般社団法人の基金とは

基金は法律上は「一般社団法人に拠出された金銭その他の財産」とされております。内部又は第三者から拠出を受けた金銭又は財産です。株式会社は出資をするとその対価として株式が発行されますが、一般社団法人に拠出しても対価は支払われません。代わりに基金については一定の要件のもと、返還義務を課してます。

基金制度は義務ではなく、法人の任意で設けられます。基金制度を設けるためには定款に定める必要があります。定款には、具体的な記載は不要でざっくりした定めとしている法人がほとんどです。例えば「当法人は、社員又は第三者に対し基金の拠出を求めることができる」「拠出された基金は、当法人が解散されるまで返還しない」等の記載で十分です。

 

基金の募集手続き

基金の募集手続きは株式会社の株式の発行手続きとほぼ同様な手続きで行います。

具体的な手順は以下のとおりです。

 

1.基金の募集事項の決定

2.申込者への募集事項の通知

3.基金を引き受けようとする者からの申し込み

4.基金の割り当て者とその金額の決定

5.割当額の通知

6.基金の払い込み

 

募集事項は、①基金の総額②金銭以外の場合は財産の価格とその内容③金銭の払い込み期日またはその期間を定める必要があります。なお、金銭以外の財産の拠出の場合は、原則検査役の選任を裁判所に申し立てる必要があります。検査役の選任は多額の費用と時間がかかります。株式の発行と同様な例外規定もありますので、金銭出資以外の場合は、慎重に行う必要があります。

 

募集事項の通知は、①一般社団法人の名称②募集事項③金銭の払い込みの場所等を記載する必要があります。

基金の割り当ては申込者から法人が任意に決定できます。割り当てる金額も法人が任意に決定可能です。割り当てを行った後は、払い込み期日まで割り当て者にその旨を通知する必要があります。

基金の割り当ての通知を受けた者は定められた期日までに指定された場所に払い込みを行います。

 

基金の返還について

基金は原則返還しなければなりません。基金返還には定時社員総会で決議と純資産額が基金の総額を上回った場合可能です。

返還請求があった場合でも返還条件に該当しなかったら返還ができません。

 

登記について

一般社団法人の基金は登記事項ではありません。よって法務局への登記はできません。

 

相続により取得した土地の所有権放棄制度について

2021-05-29

皆様、こんにちは。

司法書士の北村でございます。

 

先日は、相続登記の義務化について記載いたしました。その中で相続により取得した土地の所有権放棄制度が創設された旨、お伝えいたしました。本日は相続により取得した土地の所有権放棄制度について詳しく記載したいと思います。

 

所有権放棄制度創設の背景

今国会で相続登記が義務化されました。相続登記を長期間放置している理由の1つとして資産価値のない不動産を取得してしまった場合、修繕費や取り壊しの費用がかかったりすることが挙げられておりました。今までは所有権を放棄する制度がなかったため、所有権を手放すには相続放棄しか方法はありませんでした。相続放棄するには要件を満たさなければなりませんし、他の相続財産全てを放棄しなければならない等いろいろな制約がありました。また、市町村に寄付しようにも例えば山のような資産価値がないものは無料でも受け取ってもらえません。

そこで、相続登記を義務化するに当たって、不要な土地を放棄して国庫に帰属させることができる制度が創設されました。

 

所有権放棄制度

所有権放棄制度ですが無条件で認められるわけではありません。様々な制約が設けられるとともに費用負担も設けられるため実質的は利用できない制度となっているかと思います。

国庫への帰属が承認される要件は以下の全ての条件に当てはまらない場合です。

・一定の基準に該当する崖を含む土地で、その管理に過度の費用、労力を要するもの

・土地の通常の管理又は処分を阻害する、工作物、車両又は樹木等があるもの

・除去しなければ、通常の管理、処分ができないような埋蔵物があるもの

・管理、処分のために、隣接地の所有者との訴訟が必要となるもの

・その他通常の管理又は処分に、過度の費用や労力を要するもの

 

また、次の場合は、承認されません。

・建物の存する土地

・担保権又は使用収益を目的とする権利が設定されている土地(=抵当権や地上権、賃借権等がある土地)

・通路など、他人による使用が予定されている土地を含むもの

・一定の基準を超える土壌汚染がある土地

・境界紛争や所有権争いがある土地

 

つまり第三者の権利が一切ないきれいな更地しか国は受け付けないとのことなので、恐らく市街地の資産価値のあるような土地以外は受け付けられないと思います。

 

所有権放棄制度の手続き

所有権放棄制度が利用できるのは、その土地を相続又は相続人による遺贈により取得した者となります。また、上記のとおり承認要件を満たしている土地である必要があります。

この条件を満たしたものが法務大臣に対して承認申請と必要な手数料、管理料を支払うことで行います。

管理料は当該土地の10年分の管理費に相当する額が予定されております。

 

まとめ

相続登記の義務化に伴って不要な土地を放棄できる制度が設けられました。しかし、厳しい条件と費用負担を強いられるため、実質的に利用できる場合は限られるものと考えます。

相続登記の義務化について

2021-05-22

皆様、こんにちは。

司法書士の北村でございます。

 

今国会において相続登記の義務化の法案が成立いたしました。

本日は、この相続登記の義務化について記載したいと思います。

 

相続登記の義務化に至った背景

相続登記の義務化に至った背景として所有者不明の不動産が全国規模で増加しているからです。所有者不明の不動産は全国で約410万ヘクタールにも上りほぼ九州の面積に匹敵する規模となっております。所有者不明の土地があると迅速に公共事業等ができません。自治体は戸籍から相続人を調査することになりますが、長期にわたって相続手続きをしていない場合は、何世代にもわたって相続が繰り返されており、最終的な相続人が数10人から100人単位になることもあり、交渉がかなり難航することもあります。また、家屋が長期にわたって放置していると、空家の崩落や火災の原因となったり、不法投棄が増えたりと深刻な問題となっておます。そのような背景もあって今国会で相続登記が義務化されました。

 

相続登記の義務化の概要

不動産の相続開始があったことを知り、かつ所有権を取得したことを知ってから3年以内に所有権移転登記を申請しなければならないとされました。正当な理由なく相続登記を怠った場合は10万円以下の過料に処されることになりました。なお、正当な理由はまだ明らかにされておりません。

 

相続人申告登記制度の創設

例えば、遺産分割協議が難航し、3年以内に登記が困難な事例もあります。このような方のため、相続人申告登記制度というものが創設されました。これは相続人のうち1人が法務局において自分が相続人であることを申告することによって相続登記の義務を履行したとみなされる制度です。登記官は申請人の氏名及び住所等を登記簿に記載いたします。

 

相続登記を促進するための制度

相続登記を義務化するにあたっていくつかの便宜を図っております。

・所有権の放棄を可能とする

・法定相続分での相続登記後の登記の簡略化

 

今までは、所有権を放棄することができませんでした。ほとんど資産価値がない不動産を相続すると解体費用等の負担が生じたり、売却できなかったりで相続登記が進まない要因となっておりました。今般の義務化にあたって所有権放棄を認め、国庫に帰属させる制度を創設しました。但し、無制限で認められるわけではなく10年程度の管理費を支払う必要がございます。また、放棄ができない場合もあります。

 

また、法定相続分での相続登記後の登記は下記の場合、簡略化がされることになりました。

こちらは遺産分割協議等の前に事前に法定相続分で登記を入れた後の登記の場合には登記権利者が単独で申請できるようになりました。

  1. 遺産の分割の協議・審判・調停による所有権の取得に関する登記
  2. 他の相続人の相続の放棄による所有権の取得に関する登記
  3. 特定財産承継遺言による所有権の取得に関する登記
  4. 相続人が受遺者である遺贈による所有権の取得に関する登記

 

相続登記の義務化の施行日

公布後2年以内に施行されることになります。施行日については今後、政府で議論されることになりますが、恐らく2023年度を目途として施行されるのではないかと思います。そのため現時点では直ちに相続登記をする必要はありませんが、近いうちに登記を行う必要がでてまいります。現在、各法務局では長期相続登記未了地について調査を実施しております。恐らく今後も継続して調査をし、義務化された後は、随時裁判所等に過料を求める審判を求めていくものと思われます。

 

まとめ

今国会で相続登記の義務化が決議されました。長期にわたって相続登記を怠ると一度もあったことがない相続人と協議を行う必要があり、大変手間暇がかかります。相続が開始されましたら、後々の面倒を回避するため速やかに想像登記を行うことをお勧めいたします。

相続手続きにつき、疑問がございましたら神戸で開業しております北村司法書士事務所までお問い合わせいただければと存じます。

破産者がいる場合の遺産分割協議

2021-05-15

皆様、こんにちは。

司法書士の北村でございます。

 

本日は、相続人の中に破産者がいる場合の遺産分割協議について記載したいと思います。

 

相続人の中に破産者がいる場合の遺産分割協議

遺産分割協議は相続人全員で行わなければなりません。相続人に破産者がいる場合、破産者が遺産分割協議に参加できるかとの問題がございます。破産手続きでは、破産者の財産全部を債権額に応じて各債権者に分配する手続きです。破産手続きを行っている最中に破産者が自身の財産を自由に処分できるとすれば、債権者に分配できる財産が減少する可能性があることから認められておりません。破産手続きの中ではこのようなことを防止するため破産者の財産処分権を制限し、破産管財人が代わって財産の管理を行うことになっております。遺産分割協議は相続財産の最終的な帰属先を決める協議です。そこで、破産者が遺産分割協議に参加できるかどうかが問題となります。結論から言いますと相続開始時期が破産手続開始決定を受けた前か後かで変わってきます。

 

相続の開始が破産手続開始決定の前の場合

相続の開始が破産手続開始決定の前の場合の遺産分割協議について、法務省民事局の通達があります。破産手続きにおいて、破産者の財産の処分権が制限されるのは、破産手続開始決定の前の財産についてです。従って、法務省民事局の通達では、破産者は相続財産の処分権を失うため、代わりに破産管財人が遺産分割協議に参加することになります。なお、下記通達は相続登記を行うための手続きの過程で法務省に照会をかけた回答となりますので、登記実務の対応に沿った回答となっております。

 

不動産登記手続き

通常の相続登記のほか以下の書面が必要です。

・破産法第78条第2項の規定に基づく裁判所の許可証

・破産管財人の裁判所書記官発行の印鑑証明書

・破産管財人の選任証明書(発行の日から3ヵ月以内のもの)

※遺産分割協議書には、破産者に代わって破産管財人が実印で押印する必要があります。

 

平成22年8月24日 民二2078号通知

1 相続人の1人が相続開始後に破産手続開始決定を受けた後、相続財産について他の相続人から遺産の分割に関する処分の調停又は審判が申し立てられ、破産者である相続人は当事者とならず、その破産管財人が当事者となって調停が成立し、又は審判がされた事案について、その相続を原因とする所有権の移転の登記の申請には、相続を証する情報として、戸籍謄本等の一般的な相続を証する情報のほか、当該調停又は審判に係る調停調書又は審判書の正本の提供があれば足りる。

2 相続人の1人が相続開始後に破産手続開始決定を受けた後、破産者である相続人は当事者として参加せず、その破産管財人が破産法第78条第2項の規定に基づく裁判所の許可を得て、遺産の分割の協議に当事者として参加していた事案について、その遺産の分割の協議の結果に基づく相続を原因とする所有権の移転の登記の申請には、相続を証する情報として、戸籍謄本、遺産分割協議書(共同相続人(破産者である相続人を除く。)のほか、破産管財人の署名押印がされているもの)等の一般的な相続を証する情報のほか、当該裁判所の許可があったことを証する書面の提供があれば足りる。

 

相続の開始が破産手続開始決定の後の場合

相続の開始が破産手続開始決定の後の場合は、通常の相続手続きと変わりはありません。

破産手続開始決定後の破産者の財産は、破産者が自由に処分できる財産だからです。

 

まとめ

相続人に破産者がいる場合の遺産分割協議は、相続の開始が破産手続開始決定の前の場合は、破産管財人が破産者に代わって参加することになります。

相続人に破産者がいる場合はある程度専門知識を要しますので、お気軽にご相談いただければと存じます。

株式譲渡手続きと注意点

2021-05-08

皆様、こんにちは。

司法書士の北村でございます。

 

本日は、株式譲渡手続きと注意点について記載したいと思います。

 

株式譲渡手続き

公開会社の株式の譲渡は自由に行えますので基本的には当事者の合意のみで成立します。一方で非公開会社(株式に譲渡制限がついている会社)の株式譲渡には様々な制約があります。そこで、本日は譲渡制限株式の譲渡手続きについて記載したいと思います。

 

譲渡制限株式は以下の手続きが必要となります。

①株式会社に対する株式の譲渡承認請求

②株式会社での株式譲渡の承認

③株式会社から株主に対する通知

④株主名簿の名義書き換え請求

 

株式会社に対する株式の譲渡承認請求

譲渡制限株式を譲渡する時は、株主の譲渡人が株式会社に対して譲渡承認請求することが多いです。記載事項は会社法第138条第1号に記載されております。

 

(譲渡等承認請求の方法)

第百三十八条 次の各号に掲げる請求(以下この款において「譲渡等承認請求」という。)は、当該各号に定める事項を明らかにしてしなければならない。

 第百三十六条の規定による請求 次に掲げる事項

 当該請求をする株主が譲り渡そうとする譲渡制限株式の数(種類株式発行会社にあっては、譲渡制限株式の種類及び種類ごとの数)

 イの譲渡制限株式を譲り受ける者の氏名又は名称

 株式会社が第百三十六条の承認をしない旨の決定をする場合において、当該株式会社又は第百四十条第四項に規定する指定買取人がイの譲渡制限株式を買い取ることを請求するときは、その旨

 

株式会社での株式譲渡の承認とその注意点

株式譲渡請求を受けた株式会社は承認するか否かを決定することになります。取締役会設置会社では原則、取締役会で、非取締役会設置会社では株主総会で決めることになりますが、定款で別段の定めをすることも認められております。

中小企業ではよく株式の譲渡承認を代表取締役とする規定が見受けられます。考えなしに譲渡承認を代表取締役とするこは、お勧めができません。その理由として、中小企業の場合代表取締役自身が譲渡の当事者となることが多く、株式譲渡に関して利益相反取引となります。利益相反取引となるため、会社法上の取締役の責任を負うことになります。よって、譲渡制限の承認機関は原則通り、株主総会等の会議体にしておくことが必要です。株主が代表取締役1人の場合で実質的に代表者個人のみが承認する形でも、形式的に承認機関が株主総会となっていれば、利益相反とならないとされております。

また、銀行やファンドが絡む場合は、株式を担保として差し出すことが多く、担保実行時にいちいち譲渡承認をとれないため、「株主の譲渡については株式譲渡の承認があったものとみなす」等の定款の定めを入れることが多いです。

 

株式会社から株主に対する通知と注意点

株式会社が株式譲渡承認の有無を決定した時は、譲渡承認したものに対してその内容を通知しなければなりません。株式譲渡請求した日から原則として2週間以内に通知をしなかったときは、株式譲渡を承認したものとみなされます。譲渡を承認したくない場合は、速やかに決定をし通知しなければ、譲渡承認みなしとされますので注意してください。

 

株主名簿の名義書き換え請求

株式譲受人が株式を取得したときは、株式会社に対して名義書き換え請求することができます。この請求は譲渡人と譲受人と共同で行う必要があります。株式名簿の書き換えは株券不発行会社の場合は、第三者対抗要件となっているため、速やかに請求することをおすすめいたします。

 

まとめ

株式の譲渡手続は会社の形態によって手続きが変わります。M&A等で銀行から資金を借りる場合は、当事者だけの問題だけではないため、きっちりと書面を残しながら手続きを厳格に行う必要が求められます。なお、銀行やファンド等が絡む場合は、株券を質にとるため、株券不発行会社でも株券を発行させることが多いです。当事務所では、銀行やファンド等が絡む大規模なM&Aの手続きも多数行っておりますので、正確な手続きはもちろんスケジュール管理等もサポートできる体制を整えております。当事務所は神戸にございますが、全国対応可能でございますのでお困りごとがございましたら何なりとご相談いただければと存じます。

 

 

婚姻期間20年以上の配偶者間での居住用不動産の贈与税特例の問題点

2021-05-01

皆様、こんにちは。

司法書士の北村でございます。

 

本日は、婚姻期間20年以上の配偶者間での居住用不動産の贈与特例の問題点について記載したいと思います。

 

婚姻期間20年以上の配偶者間での居住用不動産の贈与税特例とは

婚姻期間が20年以上の夫婦間で居住用不動産または居住用不動産を取得するための金銭の贈与が行われた場合に最高2000万円まで贈与税がかからない制度です。

この制度を利用するための要件は以下のとおりです。

・婚姻期間20年を過ぎた後の贈与であること

・配偶者から贈与された財産が居住用不動産または居住用不動産を取得するための金銭の贈与であること

・贈与を受けた者が現実に居住し、その後も住む見込みであること

 

詳細は下記の国税庁のHPに記載がございますので、ご参考としていただければと存じます。

No.4452 夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除|国税庁 (nta.go.jp)

 

婚姻期間20年以上の配偶者間での居住用不動産の贈与税特例の問題点

一見2000万円までの贈与税を払わなくともよいので、得した気になりますが、贈与の目的によっては結果的に損することが多いです。

その理由は以下の通りです。

 

1.特例を受けられるのは贈与税だけ

不動産を贈与した場合、かかる税金としてかかるのは贈与税のほかに不動産取得税と登録免許税があります。不動産取得税は不動産を取得したときにかかる税金ですので、必ず発生いたします。

登録免許税は、不動産登記の登記名義人を変更する際にかかる税金です。こちらは不動産取得税とは異なり、登記は義務ではないので登記の効力が不要ならば登記しなくともよいので、必ずしも支払う必要はありませんが、登記を行わないと売買や融資等が受けられない等の事実上の不利益を被りますので、現実的には支払うことになるかと思います。

 

具体的な税額は、不動産取得税は原則、不動産の評価額の3%(特例により軽減があります。)、登録免許税は評価額の2%です。

特例がない場合は、2000万円の不動産を取得すると、別に100万円の費用がかかります。

 

2.相続税の配偶者控除のほうが得

贈与を行う目的が相続税対策の場合は、相続税の配偶者控除のほうが得になる場合が多いので、贈与税の特例を使わないほうがよいです。1でも記載いたしましたが、他に不動産取得税等がかかりますので更に損です。

 

まとめ

婚姻期間20年以上の配偶者間での居住用不動産の贈与税の特例は、相続税の節税目的ではかえって損することが多いです。この制度の利用をお考えの場合は、総合的に発生する費用を考慮して使用しないとかえって損することが多いので注意を要します

補償契約とは

2021-04-24

皆様、こんにちは。

司法書士の北村でございます。

 

本日は、令和3年3月1日に施行された補償契約について記載したいと思います。

 

補償契約とは

補償契約とは役員等がその職務の執行に関し、法令の規定に反したことが疑われ又は責任の追及に係る請求を受けたことに対処するために支出する費用(弁護士費用等)や第三者に生じた損害を賠償する責任を負う場合における損失を株式会社が役員等に対して補償することを契約をいいます。補償契約を役員と締結することは、利益相反取引に当たる可能性があるため、明文で利益相反取引の規定は適用しない旨が定められております。(会社法430条の2第7項)

 

補償の対象となるもの

・弁護士費用等の訴訟費用

・職務執行に関し、第三者に生じた損害賠償費、和解に基づき支払う金銭

 

補償の対象とならないもの

・弁護士費用等の訴訟費用のうち、通常要する費用を超える部分

・役員等と会社が第三者に損害賠償費を連帯債務を負うことになっている状況で会社が第三者に全額弁済した場合に、会社から当該役員等に発生する求償権にかかる部分

・役員等が悪意又は重大な過失があったことにより第三者に損害賠償を負う場合はその全額。なお、この場合でも弁護士費用等の訴訟費用は補償されます。

・罰金や課徴金等

 

補償契約の手続き

補償契約は取締役会(非取締役会設置会社の場合は株主総会)の決議で決定する。補償契約の相手方となる取締役は利害関係となるため、当該取締役は議決に参加することができません。

補償を実行する場合の手続きは条文上、特別な規定は置かれておりませんが、会社の重要な業務執行の決定として、取締役会決議を取るべきと考えます。

 

また、公開会社の場合は、補償契約を締結した場合及び補償の実行を行った場合は一定の事項を事業報告に記載し開示しなければならないと規定されております。補償契約に基づいて補償した取締役または受けた取締役は遅滞なく、補償についての重要な事実を取締役会に対して報告しなければならないと規定しております。

 

商業・法人登記で印鑑届を提出する義務がなくなったことへの影響

2021-04-17

皆様、こんにちは。

司法書士の北村でございます。

 

商業・法人登記で印鑑届を提出する義務がなくなりました。

その影響について本日は記載したいと思います。

 

印鑑届の提出義務について

かつての商業登記法第20条に「登記の申請書に押印すべき者は、あらかじめ、その印鑑を登記所に提出しなければならない。」という規定がありました。この規定によって、商業登記を申請するものは法務局に対してあらかじめ印鑑(いわゆる会社実印)を届け出る義務がありました。これは、届け出る印鑑を紙に押印し、その印鑑を証するため代表者の個人実印を押印して法務局に登記に先立って又は同時に紙ベースで提出していました。紙ベースで提出していた理由として、オンライン化した場合は陰影の大きさ等が変わって印鑑の確認が困難になるからです。この印鑑届が完全オンライン申請の妨げになっているとの理由でこの押印義務が今般見直しがされました。

 

商業・法人登記で印鑑届を提出する義務がなくなったことへの影響

現在はこの商業登記法第20条が削除され、印鑑届は任意となっております。形式上は印鑑届の提出は任意となりましたが、実務上はほとんど影響がなく、印鑑届は事実上提出する必要があると思われます。その理由を記載いたします。

 

・代理人申請の場合

代理人申請の場合は、オンライン申請でも書面申請でも委任状に会社実印の押印義務がありますので、従来通り印鑑届の提出が必要です。よって、印鑑届は必ず届け出る必要があります。

 

・本人申請の場合

本人申請において、書面申請の場合は従来通り印鑑届が必要です。

よって、印鑑届を届ける必要があります。

 

本人申請でオンライン申請を利用する場合は、印鑑届の提出をしなくともよいとされました。オンライン申請をするためには電子署名を施しそれを電子証明書で証明する必要があります。本人申請の場合は、年中登記を行う必要がある一部の会社を除くとほとんど登記申請をしない会社が電子証明書を取得する手間を考えれば、印鑑届を提出したほうが手間が少ないと考えます。もっとも、法務省はこのことも考えて電子証明書の範囲を拡大しマイナンバーカードでも行えるようにしましたが、この場合は代表者自身が申請書を作成し、代表者自身のマイナンバーカードを使用しなければなりませんので、あまりメリットがあるとは考えにくいです。

よって、印鑑届を提出する義務がなくなったことへの影響はほとんどなく、実務上は従来通り印鑑届を行ったほうが効率的です。

商業・法人登記での押印義務の見直しの影響

2021-04-10

皆様、こんにちは。

司法書士の北村でございます。

 

昨今、行政手続きでの押印書類の見直しを行なわれております。登記実務でも令和3年1月29日の法務省民事局通達で商業・法人登記での押印書類が大幅に見直されました。

その影響について本日は記載したいと思います。

 

商業・法人登記での押印義務の見直しの影響

令和3年1月29日の法務省民事局通達で押印又は印鑑証明書の添付を要しない書面については原則として押印の有無を審査対象としない旨の通達が出されました。具体例としては下記の書類については押印の審査をしないとのことですので、押印がなくとも登記が受理されます。

■押印がなくとも登記が受理される書類

・設立登記以外で添付する定款

・株主リスト

・本人確認証明書

・原本還付する際の原本のコピー

・資本金の計上証明書

※その他、法令で押印又は印鑑証明書の添付の規定がない書面

 

■押印が必要な書面

・設立時に添付する定款

・取締役会議事録

・取締役の就任承諾書

・代表取締役の選定を証する書面(取締役会議事録、株主総会議事録等)

・代表取締役の辞任届

※その他、法令で押印又は印鑑証明書の添付が求められている書面

 

 

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